照応知研究合同会社ロゴ

照応知研究合同会社

Resonant Intelligence Research LLC

出版・研究成果

新刊『国家安全保障と「判断構造史学」』刊行

国家はなぜ誤った方向へ進み、引き返せなくなるのか

照応知研究合同会社は、代表社員・木村初夫の研究成果をまとめた新刊『国家安全保障と「判断構造史学」―国家はなぜ引き返せなくなるのか―』を、原書房より刊行しました。

本書は、国家安全保障における重大な誤判断を、指導者個人の資質、情報不足、個別の政策や作戦だけに帰するのではなく、それらの判断を生み出す「国家判断構造」そのものから解明する、新たな研究方法を提示したものです。

国家は、なぜ引き返せなくなるのか

国家の重大な誤判断は、一人の指導者による偶発的な選択として生じるとは限りません。

政策決定制度、情報の収集と伝達、情勢評価、組織心理、国家戦略、戦争や危機を終結させる構想などが相互に作用し、特定の選択を「合理的である」と認識させる構造が形成されることがあります。

その結果、当初は複数存在していた選択肢が次第に失われ、危険が認識されても政策を修正できず、国家が望ましくない方向へ進み続ける状態が生じます。

本書が中心的な問いとして掲げるのは、「誰が誤ったのか」だけではありません。

「どのような判断構造が、その選択を生み出したのか」

「なぜ、途中で判断を修正できなかったのか」

「どの段階で、国家は引き返す能力を失ったのか」

これらの問いを通じて、国家の判断が形成され、固定化され、不可逆化していく過程を構造的かつ動態的に分析します。

「判断構造史学」という新たな研究方法

判断構造史学は、歴史上の出来事を単なる事実の連鎖として捉えるのではなく、その背後に存在した国家判断構造と、その時間的変化を明らかにする研究方法です。

本書では、国家判断構造を主として「制度・情報・評価・心理・戦略・終結」の六層から捉えます。

「制度」は、誰がどのような権限と責任をもって判断するのかを規定します。「情報」は、国家が何を把握し、何を把握できなかったのかに関係します。「評価」は、得られた情報にどのような意味を与えたのかを示します。「心理」は、組織的な楽観、過信、同調、責任回避などに作用します。「戦略」は、国家目的と手段の整合性を左右します。そして「終結」は、危機や戦争から離脱するための構想と選択肢に関係します。

これら六層は独立して働くのではなく、相互に影響しながら国家の判断状態を形成します。一つの層の機能低下が他の層へ波及すると、判断の修正可能性が失われ、国家は次第に引き返すことが困難になります。

過去の分析から将来の誤判断予防へ

本書は、大東亜戦争期および明治期の日本を主要な分析対象としています。しかし、その目的は、過去の出来事を説明することだけではありません。

歴史上の国家判断構造を分析することは、現代および将来の国家安全保障における誤判断を予防するための基礎となります。

国際環境が急速に変化し、情報が大量かつ高速に流通する現在、国家には、単に多くの情報を保有する能力だけでなく、自らの判断構造の異常を早期に把握し、判断を修正し、将来の選択可能性を維持する能力が求められます。

判断構造史学は、歴史学、国家安全保障論、政策科学、組織論、認知科学およびシステム科学を横断し、国家の判断能力を構造的に研究するための理論的基盤を提供します。

判断セキュリティへの研究展開

照応知研究合同会社では、判断構造史学の成果を歴史研究にとどめず、人間、組織、国家およびエージェント型AIの判断を保護する「Decision Security(判断セキュリティ)」へ発展させています。

エージェント型AIが情報収集、分析、提案、専門職業務の実行に深く関与する時代には、外部からの侵入や情報漏えいを防ぐ従来型のセキュリティだけでは十分ではありません。判断主体の判断構造と判断状態が、誘導、歪曲、固定化または不可逆化される危険にも対応する必要があります。

当社が研究を進める「Internal Decision Security(内部判断セキュリティ)」は、判断が生成される内部過程を保護対象とし、異常の把握、将来軌道の予測、危険領域の識別、判断の修正可能性の維持および回復を目指す新しいセキュリティ概念です。

判断構造史学が歴史上の国家の誤判断を構造的に解明する研究であるのに対し、内部判断セキュリティは、その知見を将来の誤判断の予測・予防・制御へ展開する試みです。両者は、過去の解明と未来の保護を結ぶ一つの研究体系を形成しています。

判断できる国家を、次の世代へ

人口減少、専門人材不足、熟練知の喪失、産業基盤の弱体化、国際競争力の低下、安全保障環境の悪化が複合的に進む日本にとって、国家判断能力の維持と増幅は重要な課題です。

必要なのは、過去の誤判断を批判することだけではありません。国家が自らの判断構造を点検し、異常を早期に認識し、必要な修正を行い、危機から引き返す能力を制度として備えることです。

『国家安全保障と「判断構造史学」』は、そのための第一歩として、国家の判断を捉える新たな視座を提示します。

照応知研究合同会社は、今後も判断構造史学、内部判断セキュリティ、国家判断セキュリティおよび国家判断能力増幅に関する研究を推進し、専門書、学術論文、講演、共同研究ならびに社会実装を通じて、その成果を国内外へ発信してまいります。

書誌情報

書名
『国家安全保障と「判断構造史学」―国家はなぜ引き返せなくなるのか―』
著者
木村初夫
出版社
原書房
刊行日
2026年8月5日
ISBN
978-4-562-07702-1